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子どもの姿は教師の姿を映す鏡

東筑摩塩尻教育会長 赤津 勝広

 最近は頓に過去のことを思い出すことが多くなった。教師として歩んできた三十六年の中には今でも印象深く思い出されることがたくさんあるが、自分の教師としての在り方を見返すきっかけとなった保護者の言葉や子どもたちの行動は、今でもその時の情景と共に心に強く残っている。

 「親はあの時の先生の言葉で、安心したと思いますよ」
 以前五年生を担任していた時に、ある保護者から言われた言葉。言われた時は何のことなのか分からず、「何のことですか」と問い返すと、参観日の後の学級懇談会でのことだという。
 「あの時、先生が親に『子どもたちが本当にかわいい』と言われたことで、親はみんなほっと安心したと思いますよ」という話に、内心、「それだけのこと?」と思いながらも、その保護者の言われた言葉の重みを考えさせられた。
 この学級は四年生から担任し、保護者には、子どもたちの学校での様子を話したり、できるだけコミュニケーションをとったりしてきており、関係はうまくいっているつもりでいた。しかし、本当の信頼という意味では、保護者は心のどこかに担任への不安を抱えていたのだろうとその言葉から推測できた。そう思うと、今までの関係は独りよがりの思い込みに過ぎず、そんな自分に対して、恥ずかしさを感じざるを得なかった。
 「子どもたちが本当にかわいい」と感じていたその頃は、子どもたちとの生活が楽しくて仕方なかったと記憶している。何気なく自然に口から出た言葉であったが、保護者はきっと、担任の表情や話すときの雰囲気から、今までとは違ったものを感じ取ったのかもしれない。
 いくら言葉でうまいことを言っても、そこから感じられる雰囲気というものを、保護者は感じている。また、家に帰った子どもたちの様子から、学校でのことをいろいろに感じている。そのことを痛感させられた一言であった。

 初めて一年生を担任したとき、A子との出会いがあった。
 彼女は気の強い性格からか、保育園の頃から友達に素直に謝ることができず、トラブルが修復できないことがあった。小学校に入学しても、時々同じようなことが起きた。はじめて担任した一年生、じっくり話せば分かるだろうと高をくくっていたが、わかるように話したつもりでも、そっぽを向いてしまい素直になれないA子の姿があった。こちらが根負けして声を荒げるようなこともたびたびあり、どうしたら分かってくれるだろうと日々悩む日が続いた。
 そんなある日、また、トラブルが起きた。いつもと同じように言ってもまた同じような結末になってしまうだろうと思い、「Aちゃんは、こんなにいいところがいっぱいあるのに……」と、私なりに日頃感じていたA子の素敵だなと思う姿を伝えながら話をした。
 ふと気が付くと、うつむいて目に涙をいっぱい溜めたA子がそこにいた。どんなに強く叱っても、決して涙を見せることがなかったA子。その日、A子の子どもらしい本当の姿を見た気がした。そして、今までの自分の指導が、A子の気持ちとはかけ離れたところにあり、何も彼女の中に入っていなかったことにも気づかされた。今までの自分のA子への対応は何だったのかと、愕然とした瞬間でもあった。
 その日私は、A子の姿が、自分の指導がどうだったのかを映す鏡だったことに気づかされた。

 最後に、先の東筑摩塩尻教育会総集会でお話しさせていただいた「暗夜の一燈」について、ここでもう一度紹介させていただきます。
 「提一燈行暗夜勿憂暗夜只頼一燈」
(一燈を提げて暗夜を行く 暗夜を憂うること勿れ 只一燈を頼め)
『佐藤一斎 言志四緑より』
 当日は、東筑摩教育会の前身である信濃教育会東筑摩部会長を務められた大池蚕雄先生の書で、紹介させていただきました。大池先生の思いを受け継ぎながら、私たちなりの「暗夜の一燈」を見つけていきましょう。(宗賀小学校)
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